れがいずれも編隊をくんで、まっさかさまにこっちを狙いうちにまいおりてくるのだ。
 どどーン、どどーン。
 大きな砲門もひらいた。
 空にぱっとうすずみいろの煙が、ハンカチの包みをほおりだしたようにあらわれる。
 こっちの空魔艦からうっているのである。
 ダダダダン、ダダダダン。
 向うの飛行機からも、機関銃が火のような弾丸をぶっぱなす。ときどきこつんと音のするのは、機体に敵の弾丸があたった音にちがいない。
 フワーッと、敵機は空魔艦のまわりであざやかな宙がえりをうって逃げる。
 そこをつづいて、ダダダダンとうつ。
 おそろしい空中の戦闘だった。なぜこんなことが始まったのであろうか。


   えらいチンセイ


 まるで大象《おおぞう》を、燕《つばめ》の群《むれ》がおいまわすような恰好《かっこう》だ。――空魔艦と、敵の戦闘機《せんとうき》との空中戦は。
 空魔艦もいらいらしてきたらしい。
 うちだす砲声も銃声も、いよいよさかんになり、そのはげしい砲火《ほうか》のため、耳もきこえなくなりそうだ。
 どどどーン。
 ダダダダダン。
 そのうちに、敵の戦闘機の一機に、こっちの弾があたったらしく、つばさがぶるっとふるえると、たちまち黒煙をあげて、きりもみになって落ちていった。
「みごとに撃墜《げきつい》だ」
 げきつい[#「げきつい」に傍点]――という言葉はよくきくが、そのげきつい[#「げきつい」に傍点]を見るのはこれがはじめての丁坊だった。
「じつにものすごいなあ」
 丁坊は感心をした。
 それをきっかけに、空魔艦のねらいはますます正確になっていって、一機またつづいて一機もうもうたる火焔《かえん》につつまれ、いずれも地上におちていった。
 それをみるより、のこりの三つか四つの敵機もおじけがついたのか、くるっと機首をまげて、向うへとんでいった。敵は空魔艦にかなわないとみて、どんどんにげだしたのだ。そうして遂に、敵機のすがたは見えなくなった。
 空魔艦は、べつに後からおいかける様子もなく、ゆうゆうと高い空をとびつづけるのであった。
「なんという強い飛行機があったものだろうか。一体どこの飛行機なんだろう」
 丁坊はすっかり感心したり、ふしぎにおもったりした。
 空中戦がすっかりすんでしまうと、丁坊は身体《からだ》を寝台の上によこにしているのが退屈になった。
「誰かこないかなあ」
前へ 次へ
全34ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング