出ていこうとするので、五人の部下はおどろいて、
「衛兵長。どこへいくのですか」
「うん、おれはちょっと、司令官のところへ報告をしてくる。お前たちは、いいつけたとおり見はっているんだ」
 衛兵たちは、たがいに顔を見合わせてあきれた。が、衛兵長の靴音がきこえなくなると、彼等もみんな外に出た。
「ここならまだ、ましだ。この中にいちゃ、目まいがしそうだ」
「じゃおれは食物をとってくるからな」
「いや、それはおれがいこう」
「待て、おれもいく」
 衛兵たちは、先をあらそって、廊下をかけだして行った。あとには、気のよい衛兵が、たったひとりで、廊下ではり番をしている。
 太刀川時夫は、悪臭をじっとがまんしながら、ゆがんだベッドに腰を下した。祖国日本の一大事を、どうして知らせたものかと、おもいなやんでいるのだ。
「あのステッキがあればなあ」
 日本を出発するときに原大佐からもらったステッキを彼はおもいだした。クリパー艇が沈没するまでは、たしかに持っていたが、海底要塞の中にすいこまれてからこっち、ステッキはどこへいったか行方がしれないのだ。
 ぬけ出すか!
 今では、それさえ思いもよらないことになってしまった。
 太刀川が、腕をくんで思案にくれている時である。
 部屋のすみっこに積んである空樽が、人も鼠もいないのに、ぐらぐらとうごきだした。


   秘密のぬけ穴


 うごきだした樽は、ひょいと横にのいた。すると、そのあとにあいた穴から思いがけない人の顔があらわれた。まっくろな顔だった。原地人だ!
 原地人は、穴から出て来ると音をしのばせて、こっちへはいだした。と思うと後をふりかえって、手まねきをするようであった。すると、また一人、その後からあらわれた。長いひげをはやした東洋人の顔。
 つづいて、第三の顔があらわれた。これは白人だ。
 その時であった。太刀川時夫が気がついて、がばとはねおきたのは。

 彼は、とつぜん身近に、人の気はいがしたので、はねおきて、その方をじーっと見つめた。すると、天からふったか地からわいたか、部屋のすみっこに三つの思いがけない顔が、こちらを見ている。
「あ、ダン艇長」
 と、太刀川はひくくさけんで、ベッドから立ちあがった。
 ダン艇長! そうだ、その白人は、ダン艇長にちがいない。他の二人はいうまでもなくロップ島の酋長ロロと、あの手品のうまいクイクイの神様
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