えまで、なにからなにまで、私が計画したとおり、配電盤の前に残っているあの人造人間が、順序正しくやってくれるんだ。まあ、見ているがいい」
私は、得意だった。ニーナと私をのせた人造人間は、肩を並べて、すッすッすッと歩きだした。そして階段をもう一階、上にのぼると、たいへんな力を出して、扉を押したおし、外へ出た。そこには一条《ひとすじ》のりっぱな地下道がついていた。人造人間は、そのうえを、走りだした。だんだんスピードがあがってきて、風がひゅうひゅう鳴りだした。
「ニーナ、おちないように、人造人間の背中に、しがみついているんだ!」
「ええ」
人造人間は、砲弾《ほうだん》のように走る。
あっという間に、衛兵所《えいへいじょ》の前を通りすぎた。そして地下道から外に出た。草の匂《にお》いが、ぷうんとした。二人の人造人間は、なおも肩を並べ、風を切って走りいく。
(どうも、あんまりうまくいきすぎたようだ)
私は、人造人間を利用したこの脱出計画が、あまりにうまくいきすぎて、うれしくもあったが、意外な感がしないでもなかった。それにしても、衛兵《えいへい》が発砲するでもなし、誰かが後を追いかけてくるでもなし、全く意外なことだらけであった。
一時間ばかりすると、夜が白々《しらじら》と明けていった。心も感情もない人造人間に背負《せお》われて、どんどん広野《こうや》を逃げていく私たちの恰好は、全くすさまじいものに見えた。とにかく、この勢《いきお》いで、あと一時間ばかり走らなければならないが、途中《とちゅう》、ベルギー兵かフランス兵にとがめられたとすると、人造人間にのった私たちは、化物かスパイ扱いにされて、誤解をまねくおそれがある。そんなことも、新しい心配になって、私の頭をつかれさせた。
ニーナも、死人《しにん》のように、青ざめた顔をしている。彼女は、大きな眼をあいて、不安げに、しきりに、あたりを見まわしている。
そのニーナが、とつぜん私をよんだ。
「ねえ、私たちの前を、へんな自動車が走って行くわよ。髯《ひげ》もじゃの紳士が、のっていて、反射鏡《はんしゃきょう》で、しきりに、こっちをみているわ」
「えっ、そんな奴が、前にいたか」
私は、うしろばかり注意していたので、この先駆者《せんくしゃ》には、気がつかなかったのだった。なるほど、前方五百メートルのところを、たしかに、私たちと同じよう
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