民するのですか」
「金星へゆくんです。定期的に、地球上の人類をどんどん金星へ送っています」
「へえ、金星。あの星の金星へですか」とフルハタはびっくりした。「とうとう星へ旅行のできる日が来たのか」
「うまくゆけば、もうあと三ヵ月のうちに、地球上の人間はすっかり金星へうつってしまいます」
「えっ、すると地球は空っぽになるのですか。いったいそれはどうしたわけです。この尊い地球を捨てるなんて」
「あとちょうど一年たてば、地球はエックス彗星と衝突して、めちゃめちゃに壊れることが分っているのです」
「はあ、なるほど、彗星との衝突ですか」とフルハタはうなずいたが、「それで地球から移民の必要があるんですね。それなら、金星などゆかないで、地球と気候もいちばんよく似た火星へゆかないのはどうしたわけです」
 するとチタ教授は、今までにない険しい目をして、フルハタをふりかえりながら、いったことである。
「あなたも古いだけあって頭脳がわるいのね。いま地球の人類は、火星の生物と戦争しているのじゃありませんか。われわれが金星移民を計画したとたんに、火星生物は妨害をはじめたのです。だから移民ロケットも、今までに七パー
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