でした。それが済むと、室の一隅に置かれた無線の送受信装置やX線の発生装置がゴチャゴチャ並んでいる方をジロジロと見廻していましたが、配電盤の開閉器を全部きってしまうと、機械という機械の間を匍《は》いまわり、変圧器の下に手をさし入れて掌を油だらけにしたり、丹念にボールトをはずして電動機を解体したりなぞやっていました。それでも彼が探し求めるものはないらしい様子で、遂には機械の中に棒立ちとなったまま、当惑顔《とうわくがお》にうちしずんで見えました。
「なにを探しているんだ、赤星君」呆気《あっけ》にとられていた尾形警部が声をかけましたが、探偵は口の中で返事をしたばかりであったのです。が何を思いついたか、先刻《さっき》とりはずした受信機の方をふりかえると、彼の眼は燃え立つばかりに輝きました。受信機のあった丁度真下と思われるところに、さきほど彼が点検したと同じ形の目盛盤が一個、腹をむけて転《ころが》っていたのでした。
赤星探偵は、その小さい目盛盤をピンセットの先に挿《はさ》みあげましたが、それを紙の上に置くと青酸加里の白い粉をパラパラと削り落し、今度は懐中から虫眼鏡を出してのぞいたようですが、
「尾形さん、ここにある指紋を見て呉れ給え。こっちの方のは彼奴の左の人差指にちがいなかろう!」
警部はポケットから指紋帳を出して較べていましたが、驚きと悦びの声をあげて、
「彼奴の指紋だ。とうとう証拠を押えちまったぞ」
「お嬢さん、大方様子でお察しのとおり、ある人間が、お兄さまの癖を利用するために、あの受信機のダイヤルに、青酸加里をぬりつけて置いたのです。不幸なお兄さんは、あの夜|時報《タイム・シグナル》を受けるとて受信機の目盛盤を廻しているうちに、左の指に青酸加里をベットリつけてしまいました。開閉器をきり、綾子夫人からレモナーデを受けとる前に、青酸加里は指から口の中へ既に、いとたやすく搬ばれていました。右手でレモナーデのコップをとりあげて一息に飲み下したのだから、何条《なんじょう》たまりましょう。たちまち青酸瓦斯が体内に発生して一分と出でぬ間に急死してしまったのです。あの惨劇のあった後犯人はひそかに、青酸を塗った目盛盤を外し、これを綺麗に洗滌《せんじょう》しようと思って此の室にやって来たのです。しかるに犯人のために不幸な出来事が突発した。というのは、折角《せっかく》とり外したダイヤルが
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