こう》で蛍光板をのぞきこむのでありました。時には手をのばして蛍光板と壁との間にさし入れ、鉛筆でなにやら壁の上に印をつけているようでした。二十分もすると実験は一《ひ》と先《ま》ず終了しました。黒い毛繻子《けじゅす》のカーテンを、サッと開きますと、明るい光線がパッとさしこんで来たので、百合子は頭がくらくらしたので両眼を閉じました。やがて静かに眼を開いてみますと、壁の上に鉛筆で黒々といたずら書きのしてあるのに気がつきました。それは下手《へた》なデッサンを見るように、首から上のない人間の形のように見えました。
「赤星さん、それはなんでございますの?」といぶかしそうに百合子が訊ねかけたとき、表から尾形警部が入って来ました。
「どうだね、うまく出たかしら」
赤星探偵が黙って指した方を見た警部は、
「フーム」
と首をかしげて何か考えているようでしたが、
「こりゃ君、婦人じゃないか。それも、綾子夫人の身体と同じ位の大きさだ」
「お嬢様、亡くなった奥様の洋服を一着、借して頂きとう存じます」
と赤星探偵が言いました。
本館からとり寄せた綾子夫人の洋服を、この壁の上にしるし出された人型《ひとがた》の上に重ねてみますと、正しくピタリと大きさが合うではありませんか。肩胛骨《けんこうこつ》や臀部《でんぶ》のあたりは特によく一致していました。
「お嬢さん、不思議なことを御覧になったでしょう。私達の試みは今のところ、半分は成功し、半分は失敗に終りました。成功の方の半分を、尾形さんと共にきいていただきたいと思います。――私は尾形さんに事件の内容を伺ってから、これは実に恐ろしい殺人鬼の仕業《しわざ》であることを知りました。尾形さんも、そうは思っていられるものの、証拠が見付からないのでとうとう休職まですることになったのです。私は犯人があまりに用意周到なる注意を払っているのに驚きました。しかしそれは犯行を否定するような結論を導き得たのにも係わらず、皮肉にも反《かえ》って犯行のあった疑いを深く抱かせるようになりました。
先ず、私がこの室にはいってから発見した事実が二つあります。
それは、失礼ながら、尾形さんに不足している専門知識から初めて見出すことの出来るものなのでした。その第一は、この室の壁にかけられた自記式《オートグラフィック》の寒暖計、湿度計、及び気圧計の中にのこされてある犯行当時の記録な
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