よいよこの次だ」
「一体どんな映画なのだろう」
人々は胸のうちに、あれやこれやと想像をめぐらせた。
「私を外へ出して下さい」潮十吉は隣りに遊んでいる警官に訴えた。
「いや、ならん」
警官の声はあっけなかった。
さあ、いよいよ問題の映画が写し出されようとしている。潮十吉が、深山理学士のところから奪って来たフィルムはこれだ。そして身許《みもと》不明の轢死《れきし》婦人のハンドバッグの底に発見せられたのも、矢張《やは》り同じフィルムだった。この映画が写し出されたが最後、意外なことが起るのではないか。既に靴の跡によって嫌疑《けんぎ》の深い潮十吉であるが、この一巻の映画によって、彼の正体が暴露《ばくろ》するのではあるまいか。赤外線男は潮十吉か。或いは赤外線男の合棒《あいぼう》でもあるか。
カタリと音がして、スクリーンの上に、青白い光芒《こうぼう》が走った。こんどは十六ミリであるから、画面はスクリーンの真中《まんなか》に小さくうつった。
「ああ、これは……」
「ウム……」
画面の展開につれ、人々は苦しそうに呻《うな》った。誰かが、いやらしい咳払《せきばら》いをした。
いまスクリーンに写
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