な道具建《どうぐだて》をし、彼《か》の青年の知覚を鈍麻《どんま》させて、あの狂言をうったのさ。これは中国人でなければできない用意周到ぶりだよ」
「すると、マリ子という女は、一体どうしたわけのひとなんだね」
「あれは、すこしばかり儲《もう》け仕事をした女にすぎない。無論中国人ではなく、われわれと同じ国籍をもっているんだよ。事件の中に若い女が一人とびだすと、すぐその女が主人公《ヒロイン》になってしまうことが世間には多いが、今度の事件では彼女は一個のワンサ・ガールに過ぎなかった。殺人がなかったことと、それとが、今度の事件の二つの特異性だったとでも、こじつけ迷説《めいせつ》を掲《かか》げて置くかね。はっはっは」
底本:「海野十三全集 第1巻 遺言状放送」三一書房
1990(平成2)年10月15日第1版第1刷発行
初出:「新青年」博文館
1932(昭和7)年4月号
入力:浦山聖子
校正:土屋隆
2007年8月29日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全24ページ中24ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング