《くだ》をつかって、先に弾丸の出る小さい穴をあけとけばよろしい。専務車掌が窓外に火を見なかったというのも、こんな仕掛けをすれば説明がつきます。あとは、電気を使って発砲させることもできるでしょう」
「わかります!」と警部は、探偵小説家の途方もない想像力で煙《けむ》にまかれながら、合槌《あいづち》をうった。
「射撃手が跳梁《ちょうりょう》するのは、三人が三人とも申し合わせたように夜間に限るのはどうしたものでしょう。いいですか、これは面白い問題です。車内に殺人鬼《さつじんき》がいるのだったら、なにも夜分を選ばなくても、真昼間だって割合|空《す》いた電車があるでしょうから、射ちたくなる筈です。それがなくて夜に限るというのは、この精巧な器械を、或る地点に据えつける必要があるからなんです。器械や、犯人の姿を見られては困るからです」
大江山警部は、例の癖《くせ》をだして獣《けもの》のように呻《うな》っていた。その一方に、探偵小説家というものは、こんなにまで科学的でなければ勤《つと》まらないものかと、或る種の疑惑が湧いてこないでもないのだった。
「貴方はよくお調べですね」と警部が皮肉《ひにく》のつも
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