ずと同様のものをこしらえ、それにライターの火縄の火を燃えあがらせることに成功した。焔はめらめらと、赤い舌をあげて燃えあがった。その焔を、枯れ草のかたまりへ移した。火は大きくなった。こんどは、それを枯れ枝の方へ移した。火勢《かせい》は一段と強くなった。それから先はもう困らなかった。明るい、そしてあたたかい焚火《たきび》が、どんどんと燃えさかった。
あたたかくなり、明るくなったので、春木少年はすっかり元気になった。附近から枯れ枝をたくさん集めて来た。もう大丈夫だ。
火にあたっていると、ねむくなりだした。昼間からの疲れが出て来たものらしい。
しかしここで睡《ねむ》ってしまっては、焚火も消えてしまい、風邪をひくことになるであろうと、彼は気がついた。そこで、なんとかして睡らない工夫をしなくてはならない。彼は考えた。
「そうだ。さっき戸倉のおじさんからもらった球をしらべてみよう」
それは、この際うってつけの仕事だった。少年はポケットから、例の球を出した。火にかざして、彼ははじめてゆっくりとその品物を見たのだ。
「やッ。これは眼玉だ。気持が悪い」
彼はぞっと背中が寒くなり、眼玉を手から下へとり落とした。眼玉は、ころころところがって、焚火のそばまでいった。
「待てよ。あれはほんとうの眼玉じゃないらしい。ああ、そうだ。義眼だろう、きっと」
彼は、自分があわてん坊だったのに気がついて、おかしくなり、ひとりで笑った。
「あ、眼玉があんなところで、焼けそうになっている。たいへん、たいへん」彼はあわてて、もえさしの枝を手にとると、焚火のそばから義眼を拾い出した。
「あちちちちッ」義眼はあつくなっていて、彼の手を焼いた。彼の手から義眼は再び地上に落ちた。すると義眼は、まん中からぱっくりと、二つに割れた。
それは春木少年のためには、幸運であったといえる。なぜなら、火で焼けでもしなければ、この義眼を開けることは、なかなかむずかしいことであったから、つまりこの義眼は、一種の秘密箱であったのだ。この球を開くには、どんなにしても一週間ぐらい考えなくてはならなかったのだ。少年は幸運にもその球形《きゅうけい》の秘密箱を火のそばで焦がしたがために、秘密箱のからくりは自然に中ではずれ、彼が二度目に手から地面の上へ落とすと、ぱっくりと二つに割れたのである。しかし、これには春木少年はおどろいて、目をぱ
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