た。
男たちがその大花瓶を、店のほどよいところへおろしてでていくと、立花先生はチャンウーのほうをふりかえり、
「買っていただきたいというのは、これですの。これは父があなたのお国を旅行した際、北京《ペキン》で買ってきたもので、あたしとしては手離しにくいものですが、急に金のいることができましたので……」立花先生は、さすがに恥しそうに顔をあからめ、もじもじしていた。
「なるほど、これは立派な花瓶、値段によっては買いましょう」
チャンウーは花瓶のおもてを、なでたり、さすったりしていたが、ふと、なかをのぞいてみて、妙な顔をして眉《まゆ》をしかめた。
「おや、この花瓶、なかがつまってますね」
「そうなのです。父が買ってきたときからそうなっているんです。だから父はこの花瓶のことを、開《あ》かずの花瓶だなどと笑ってました。が、……きっと、なにかわけがあって、花瓶をつめてしまったのでしょうね」
チャンウーが不思議に思ったのも無理ではない。その花瓶は首のところまでセメントがつめてあって、叩くとコツコツかたい音がした。チャンウーは、しばらく考えていたが、
「いや、これは珍しい花瓶です。しかし、これくらい大きな花瓶になると、花を飾るよりも、花瓶自身が飾りものです。で、いくら御入用ですか」
「まあ、それじゃ買ってくださいますの。実は、……」
と立花先生が金額をきりだすと、チャンウーは笑って、
「それは高い。なかのつまった花瓶なんて、やっぱり疵物《きずもの》も同様ですから、その半分ぐらいでなくちゃ……」
「あら、半分はひどいですわ。もう少しフンパツしてくださいな」と、しばらく押問答《おしもんどう》をしていたが、いったい、どれくらいで折れあったのか、それから間もなく骨董商の店をでていく立花先生の顔色をみると、いかにも嬉《うれ》しそうな微笑がうかんでいた。
チャンウーはそのうしろ姿を見送って、それから、不思議そうに首をかしげ、しばらく見事な大花瓶を、なでたりさすったりしていたが、やがて表のドアをしめると、奥のひと間へひっこんだ。
もう日が暮れているのである。
怪人《かいじん》現《あらわ》れる
チャンウーの店の隣は、四階建のビルディングになっていて、一階は貿易促進《ぼうえきそくしん》展覧会の会場になっているが、二階からうえは貸事務所《かしじむしょ》になっている。
ところが、
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