しはおどろきましたね」
「それからどうした」頭目は気色ばんで、その先の話をさいそくした。冠《かんむり》の下のベールがゆらゆらと動く。
「それから頭目探しです。みんなをかりたてて、あらゆるところを探しまわりましたね。ところがだめなんです。机ドクトルからは、『まだか、まだか』と、きついさいそく。困りましたね。それで三日間、得《う》るところなしです」
「ばかだなあ。そんなものが見つかれば、なぜすぐに買いにいかないんだ」
「おっと。それはいわないことにしてもらいましょう。この山塞では、四馬剣尺頭目が命令しないことは何一つ行えないきびしいおきてになっているんです。これは頭目、あなたが作ったおきてですよ」
「よし、そんならよし。じゃあ、机博士をここへ呼んでくれ」
「はい」木戸がでていくと、やがて机博士がいれかわって細長い身体をこの部屋にあらわした。彼は木戸とちがって落ちつきはらっていた。頭目の前までいって、卓《たく》をへだてて、四角い椅子に腰を下ろした。
「ご用ですかな」
「今、木戸から聞いたが、三日前に、海岸通りのある店で、黄金メダルの半ぺらを見つけたって」
「偶然に見つけましたよ。さっそく頭目に知らせようと骨を折ったんですが、残念にも、頭目に運がなかったな」
「本物かい」
「さあ、私は本物と鑑定しましたね。それも頭目がこの間まで持っていた半ぺらではなくて、その相手になる半ぺらでしたよ。三日月形をして、骸骨《がいこつ》の顔が横を向いているようでした」
「お前は、それを手にとってみたのか」
「手にとってみましたとも。万一、にせ物では頭目に知らせてお叱りをこうむるばかりだから、掌《てのひら》にのせて比重をあたってみました。たしかに純度の高い黄金でできていることにまちがいなし。そこで値段を聞いたら、三十万円というんです。その因業爺《いんごうじじい》のチャンフーという主人がね」
「三十万?」頭目はちょっとことばをとめたあとで「三十万円にちがいないか」
「ちがいなし。しかしなぜ頭目は、そんなことを聞くんです」
「とほうもない高値だから」
「ふふン」と机博士は、けいべつをこめた笑い方をして、
「しかしこれが例の宝庫へ連れていってくれる案内者なんだから、三十万円はやすいと思うがなあ」
「あの店の商品としては高すぎるんだ、そして君はどうした」
「どうしたもあるもんですか。さっそく山塞へかけ戻
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