まれな宝さがしとは……」
「先生。牛丸君がかどわかされたことも、実はこの宝さがしに関係があると思うんです。そしてほんとうは、ぼくが連れていかれるはずのところ、賊《ぞく》はまちがって牛丸君を連れていったんだと思うんです」
「君のいっていることは、さっぱりわけが分らない」
「それはこの事件のはじまりからお話しないと、お分りにならないのです。実はこの前、牛丸君とぼくと二人でカンヌキ山へのぼりましてねえ……」と、それから生駒《いこま》の滝《たき》の前で戸倉老人にめぐりあい、黄金《おうごん》メダルの半かけと絹地《きぬじ》にかいた説明書をもらったことから、メダルを失ったことまで、残りなくすべてのことを金谷先生にうちあけた。
先生はおどろいて、はじめは「ほう」とか「おもしろいね」といっていたのが、終りには腕をくみ、身体をかたくして、「ふん、それからどうした」とか、「それはたいへんだ。で、どうした」とか、さかんに力んでたずねた。
「これが焼け残った絹のハンカチの一部です」
と、春木少年が金谷先生の手にそれを渡したとき、先生の緊張は頂点《ちょうてん》に達した。
「なるほど。これはほんものだ。えらいことになったものだ」
先生はそこで頭をひねって、しばらく沈黙したが、やがてあたりへ気をくばり、低い声でいった。
「春木君。先生は昨日、君がとられたという黄金メダルの半ぺららしいものを、海岸通りの横丁の骨董店の飾窓の中に見かけたよ」
「ええッ。先生、それはほんとうですか」
「ほんとうかどうか、とにかく君が今話をした三日月形《みかづきがた》の黄金メダルというのによく似ていた。君の話では、お稲荷《いなり》さんのお堂に住んでいた男が、あの店へ売ったんじゃないかな」
「あッ、それにちがいありません。先生、その店はなんという店ですか。どこにありますか。教えて下さい。これからぼくはすぐいって、取返してきます」
こんどは春木少年の方が、大昂奮してしまった。
「待ちたまえ、春木君。その店の老主人は昨日何者かのためにピストルで殺されてしまったんだよ。今朝の新聞を見なかったかね」
「ああッ。そうか。すると今朝の新聞にでかでかと大きくでていたチャンフー号主人殺しというのはこの店ですね」
「そうなんだ。だからね、今はその筋で殺害犯人を見つけようと鵜《う》の目|鷹《たか》の目でさがしているから、君なんかうっかり
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