今まで気がつかなかった天文部員の怠慢を、一つ大いに責めなくちゃならんと思いますわ」
「そんなことは後でゆっくり考えることだ。それよりもそのロケット艦が、どんな攻撃武器を積んでいるかを観測させ、一刻も早く報告させた方がいいだろう」
そういっているとき、天文部からの報告が伝声管を通じて入ってきた。部長ホシミの声だった。
「――観測が困難を極めております。はい」
「一体どうしたんだネ。わたしは貴下の愛国心を疑うよ」
「いいえ、女大臣アサリどの。部員一同、愛国心には燃えているんです。寧ろ昂奮し過ぎています。だから観測装置をあやつらせても、落ちついて精密な観測をやり遂げる者がいません。日頃の熟練ぶりに比して、五十%ぐらいの能率しか発揮し得ないのです」
「人間て、なんてだらしがないんだろう。では、貴下が自ら観測したらどう?」
「私とて同じことです。どうも頭脳が麻痺しているようです」
「ではもう一度、音楽浴をかけようかネ」
「いやそれはいけません。音楽浴が私どもの頭脳を麻痺しているんですから」
「ちぇッ。この上の弁解は聞きませんよ。そして貴下たちがその職責を尽さなかったときには、わたしはすぐに刑罰
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