だ胸がわるいか。まだ、なおらんか」
と、電車の中までも、いたわってくれた。
はっきり書くと、その夜八時半ごろになって、この胸のわるさは、やっと癒《なお》った。と同時に、ここ数ヶ月の気分の悪さが、一ぺんに吹きとんでしまった感じがした。決行するとは全然予期しなかった特殊飛行は、僕の病気までを宙返らせた。最悪の状況下にある自分のからだを駆って、よくも宙返りに耐えたということは、私事ながら、実に大きな収穫であった。病気のときは、進んで特殊飛行を志願することにしたい。但しそう思ったのは、まるで生れかわったように元気になった翌日のことではあったが……。
底本:「海野十三全集 別巻1 評論・ノンフィクション」三一書房
1991(平成3)年10月15日第1版第1刷発行
初出:「航空朝日」朝日新聞東京本社
1940(昭和15)年4月号
入力:田中哲郎
校正:土屋隆
2005年6月14日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全2ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング