、また寿命《じゅみょう》がのびるそうだよ」
「じゃあ、お母さん、そういう工合にすると二百歳までも、三百歳までも、長生きができることになるじゃありませんか。うれしいことですね。お父さんなんか昭和二十年に死んじまって、たいへん損をしたことになりますね」
「ほんとうにおしいことをしました。お父さまももう十五、六年生きておいでになったら、わたしと同じように、ずいぶん長生きの出来る組へはいれるのにねぇ。そうすれば、お母さんは、今よりももっと幸福なんだけれど……」
 正吉の母は、早く亡くなった正吉の父親のことをしのんで、そっと涙をふいた。
 そのときだった。りっぱなひげをはやした三十あまりになる紳士《しんし》と、それよりすこし下かと思われる婦人とが、かけこんで来た。
「あ、お母さん。ここへ、兄さんが訪《たず》ねて来てくれたんですって」
「あたしの兄さんは、どこにいらっしゃるの」
 正吉はその話を聞いて、目をぱちくり。
「おお、お前たちの兄さんはそこにいますよ。ほら、そのかわいい坊やがそうですよ」
 母親は正吉を指した。
「えっ。この少年が、僕の兄さんですか。ちょっとへんな工合《ぐあい》だなあ」

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