た。
「いやあ、三十年後の強盗団はさすがにすごいことをやりますね」
 と、正吉少年はおどろいてしまった。


   すばらしい地下生活《ちかせいかつ》


 区長さんの話によると、人々は地下に家を持って、安全に暮しているが、事件や戦争のないときにはこうして、大昔の武蔵野平原《むさしのへいげん》にかえった大自然の風景の中に自分もとけこんで、たのしい散歩やピクニックをする人が少なくないとのことであった。
「じゃあ、前のような地上の大都市というものは、どこにもないのですね」
「そうですとも。昔は六大都市といったり、そのほか中小都市がたくさんありましたが、いまは地上にはそんなものは残っていません。しかし、地の中のにぎわいは大したものですよ。これからそっちへご案内いたしましょう」
 正吉は、区長たちの案内で、ふたたび地下へ下りた。
 地下といえば、正吉の地下鉄の中のかびくさいにおいを思い出す。鉄道線路《てつどうせんろ》の下に掘られてある横断《おうだん》用の地下道の、あのくらい陰気《いんき》な、そしてじめじめしたいやな気持を思い出す。また炭坑《たんこう》の中のむしあつさを思い出す。
 だが、区長た
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