りません。君は早く大時計をとめて来るのです」
「いったい、どうすれば、あの大時計をとめることが出来るのですか」
「子供の力では、出来ないかもしれぬ。いや今、君に行ってもらう外に、方法はないのだ。もっとこっちへよりなさい。大時計の仕掛はこうなっている……」
と、怪囚人は、鉄の壁へ、釘《くぎ》の折《お》れで、大時計の図をかきだした。
大発見
話は、四人の少年たちの方へうつる。
地震のあとで、放《ほう》りこまれた部屋の一方の壁がするすると上にあがって、そのむこうにあらわれたのは、ほこりの積った古風な実験室みたいな部屋であり、そこに一つ額縁《がくぶち》が曲ってかかっていたが、その中の油絵はまん中が切りとられていて、なかったこと、そしてそれはどうやら人物画らしいことなど、すでに諸君の知っているところである。
「おどろいたね。どこへいっても、からくり仕掛ばかりの屋敷だ」
あまり物事におどろかない五井少年も、こんどはおどろいた様子。
「なんだろう、この部屋は。錬金術師《れんきんじゅつし》の部屋みたいだが、おい、四本君。これは君のお得意《とくい》の科目だぜ」
六条が、四本の背中をつっつく。
「ふん。たいへん興味がわいてくるね。でも、ぼくには、これがなにをする部屋だか、さっぱり分らないよ。どこから調べたらいいのかなあ」
四本は、部屋の中を歩きまわる。
もう一人の二宮少年は、あいつづいて起るおどろきの事件に、すっかり心臓を疲らせたと見え、ふだんのお喋《しゃべ》りがすっかり無口になって、青ざめた顔で、みんなのそばを離れまいとして、ふうふういいながらついてくる。
「ははあ、こんなものがあったぞ」
四本が、とつぜん頓狂《とんきょう》な声をあげたので、のこりの少年たちは、彼の方へ寄っていった。
「これは何だか分るかい」
と、四本が、棚に並んでいたガラス壜《びん》の一つをとりあげて、みんなに見せた。中には、黄いろ味をおびた、やや光沢《こうたく》のある結晶している石がはいっていた。
「知らないね。いったい、それは何だ」
「これは、昔から日本にもあるといわれてたが、そのありかはなかなか知れていない水鉛鉛鉱《すいえんえんこう》だよ」
「すいえんえんこう、だって。それは何だ」
こうなると四本の話をだまって聞くより手がない。
「これは昔たいへん貴重なものとして扱われた鉱石なん
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