るのが本当なんだけれど、どうする」
五井が、頭の上をさしていった。
「ぜひ、みたいものだ、しかし、下から長いはしごを持って来る必要があるね」
六条が、そういった。
「ぼくは、時計台の天井は調べる必要はないと思う。だって、あの上は建物の外へ出るだけだからね。それよりも、時計の機械を調べたいね。なぜ、そして、どうして、この時計は停ってしまったのか、それを知りたいね」
四本が、こういって、反対の説をもちだした。
「時計のことよりも、この屋敷へはいって行方不明になった北岸さんなんかの安否《あんぴ》を調べるのが第一の目的なんだから、やっぱり時計台の天井までのぼって、そのへんに何か隠《かく》れ穴《あな》でもないか、調べた方がいいよ」
五井は、六条が同意したので、あくまで天井を調べたいといいはった。
「じゃあ、手分けをしてやればいいよ。君たち二人は天井を調べ、ぼくと二宮君は時計の機械を調べる」
「さんせい、ぼくは時計の方だ」
二宮が叫んだ。
そこで四人は、二手に分れることになったが、まだロープをとくところまでいかない前に、とつぜん意外なことが起こった。
「あ、地震らしいぞ」
「うん、これは大きな地震だ」
「あ、こんなところにいては、あぶないね」
がたがたと、四少年のいる板の間は大きくゆれだした。天井からは、土のようなものがばらばら落ちて来た。時計の金具《かなぐ》が、ぎしぎしきしむ。四少年は、たがいに抱《だ》きあって、ゆれがおさまるのを待とうとしたが、そのとき板の間がめりめりと音をたてて、ぐらりと傾《かたむ》いた。
あっという間に、四少年は、傾いた板の間からすべり落ちて、下へ墜落《ついらく》していった。さっきはちゃんとしていた階段が方々ではずれていたので、少年たちはどこまでも下へ落ちていった。
地震が奇縁
そのままでは、少年たちは下で頭をぶっつけて死ぬか重傷を負うか、どっちかであったろう。
だが、幸運というのか何というか、途中で、階段が裏がえしになって、斜めに空間にひっかかっていたのにぶつかった。そしてそれにぶつかったはずみに、すぐ前の壁の穴の中へずるずると滑《すべ》りこんだ。
「あッ」
身体の平衡《へいこう》をとりもどすひまもない。一同は、はずみのついたボールのように、もんどりうってくらがりの闇《やみ》の中へ叩きつけられたが、幸いにもそこは身体にや
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