四少年は、ロープの間隔をおいて、五井から順番に階段をのぼりはじめた。
やがて五井が、階段を中二階までのぼり切った。そのとき、しんがり四本が、階段の第一段に足をかけた。
この階段は、まず異状がなかった。
次は、中二階から二階へあがる階段だ。これは今までの半分位の短い階段だった。先頭を五井がのぼる。
がたん。
大きな音がして、「あっ」と五井の叫び、五井の身体は、階段の中ほどに、とつぜん開いた穴の中へもんどりうって消えた。
「あっ、しまった」
六条が前にのめる。
二宮が、うわッといって悲鳴をあげる。
「うぬッ」と、しんがり四本が顔を真赤《まっか》にして、そこへ伏せる。「みんな、その位置を動くな」
幸いにも、五井は救いだされた。他の三名が、早く身体を伏せたからよかったのだ。
「ああ、ひやっとした。いったいこの屋敷には、落とし穴がいくらあるんだろう」
五井は、落し穴からひっぱり上げられると、にこにこ笑いながらいった。彼は、ようやくこの種の冒険になれて、もう大しておどろかなくなったらしい。
他の少年にも、危険とたたかう自信ができたようだ。このようなやり方で、少年たちは階段を一つ一つ征服していった。
階段は上になるほど狭くなり、そして粗末《そまつ》になった。もうジュウタンなんか見られなかった。板ばりに塵埃《じんあい》や木の葉がたまり放しであった。だがそこにも落とし穴が二つも仕掛けてあった。
「なるべく階段の端《はし》を通った方がいいようだ、まん中を歩くと、落とし穴の仕掛が働くらしい」
四本は、早くも階段の秘密を見ぬいた。
いよいよ時計塔の中へ、先頭の五井は足をふみこんだ。階段はいよいよ狭くなり、人がひとりやっと通れるくらいだ、そして天井は高いが、室内はまっくらであった。懐中電灯の光をたよりに、あがっていくよりほかなかった。
その光の中に、複雑な機械が、照らしだされた。今はもう死んだように動かなくなったこの時計屋敷の大時計の機械らしい。少年たちは、今こそ古い秘密と向かいあったのだ。
高い天井
「みんな、心をしっかりもっているんだよ」
先頭にすすむ五井が、うしろの連中に、最後の注意をあたえた。
「うん、大丈夫だよ」
「心配するな」
「ほんとに、おちついて、しっかりしてくれよ、どんなお化けが出たって、こわがってはだめだよ」
「こわがるくらいなら、
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