後に見たときと同じ灰色の丸い顔に、うす笑いをうかべ、そして黒髪をうしろへ長く垂らしていた。
 函の陳列品説明には、熱帯の或る種族の人間が、死ぬと顔の皮を髪と共にはぎ、それを乾燥したものだと記してあった。そのとき同じような奇怪な首がたしかに三つ並んでいるのを見たのであるが、その後行ったときにはその首は二つしかなかった。
 そして博物館の人に、私はいくども質問をくりかえしたのではあるが、館員は、その首ははじめから二つしかなく、三つはなかったことに間違いはないと言い張るのだった。ヤナツの妻君の首は、どうしたのであろうか。



底本:「海野十三全集 別巻2 日記・書簡・雑纂」三一書房
   1993(平成5)年1月31日第1版第1刷発行
初出:「にっぽん」
   1949(昭和24)年9月号
入力:田中哲郎
校正:土屋隆
2005年1月7日作成
青空文庫作成ファイル:
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