努力していく人間の力もまた、ばかにならないものだ」
「敗戦日本には今一台の飛行機もないけれど、わたしたちと同じ同胞であるアメリカ人やイギリス人やソ連人などは、たくさんの飛行機を持っている。だから人類全体として考えると、わたしたちはやっぱり飛行機をうんと持っていることになるんだ。そうですね、おじさん」
「そういう考え方をしてもいいね。日本人がもっともっとりっぱな行いをするようになって、世界の人々から信用されるようになったら、そのときには日本人にも飛行機をのりまわすことが許されるだろう。悲観することはない」
「じゃあ、原子力を使って、宇宙旅行をする日もやがて来ますか」
「日本人に対する信用が回復すれば、そういう日も来るにきまっている」
「うん。そんなら、いいなあ。じゃあ、ぼくたちは今からうんと勉強をしておかなくてはね。さあたいへんだ。急に仕事がふえたぞ。ぐずぐずしていられないや」
「三四郎君。君は今日うちへ来たとき、生きているのがいやになったといってたが、今はどうだね」
「おじさん。あんなことは、もう思っていませんよ。それよりも、ぼくはうんと長生きをしたいと思うようになりました。うんと長生きをして、われらの世界同胞のために、すばらしい発明をしたり、住みよい世界をつくったり、そのほかすることがうんとふえましたよ」
「それはよかった。きみの考えがかわって……」
「今ぼくらは苦しいのだの、つまらないのだの思っているけれど、アトランチス人の最後のことを思うと、ぼくらは元気を出さなくてはならないと思いました」
「それを聞いたら、あの人たちも浮かばれることだろう」
底本:「海野十三全集 第11巻 四次元漂流」三一書房
1988(昭和63)年12月15日第1版第1刷発行
初出:「まひる」
1947(昭和22)〜1948(昭和23)年頃(掲載年月日不詳)
入力:tatsuki
校正:kazuishi
2005年12月3日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全4ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング