り状であった。しかし楊《ヤン》博士は、その電文を読んでも別に悲観の模様もなく、むしろはるかにチャンスカヤ某のために憐愍の情を催したくらいであった。
「軍用鮫は役に立って、みごとに軍船百七十隻を撃滅したではないか。まずその恐るべき、偉大な効果を語らずして、その軍船の国籍を論ずるなんて、きゃつも科学のわからんやつじゃ」
 そういって博士は、科学者でない人間との交際《つきあい》のまったくつらいことをなげいたことであった。



底本:「十八時の音楽浴」早川文庫、早川書房
   1976(昭和51)年1月15日発行
   1990(平成2)年4月30日2刷
※混在する「大師」と「大帥」は、底本通りとした。
入力:大野晋
校正:福地博文
2000年3月8日公開
2006年7月20日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全5ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング