、いまポッカリと丸い窓が明いている。いや窓ではない。人間が楽にくぐれるくらいの出入口なのだ。その出入口をとおして、明るい室内が見える。電気や蒸気を送るためのパイプが何本となく壁を匍《は》いまわり配電盤には百個にちかい計器《メートル》が並び、開閉器《スイッチ》やら青赤のパイロット・ランプやら真空管が窮屈《きゅうくつ》そうに取付けられていて、見るからに頭の痛くなるような複雑な構造になっていた。
 通信係の六角進《ろっかくすすむ》少年は、受話器を耳にかけたまま、机の上に何かしきりと鉛筆をうごかしていたが、やがて書きおえると、ビリリと音をさせて一枚の紙片《しへん》を剥《は》いで立ち上った。そこで電文をもう一度読みなおしてから、受話器を頭から外《はず》し、
「艇長《ていちょう》、艇長。……ウイルソン山|天文台《てんもんだい》から無電が来ましたよ」
 といって、後をふりかえった。
「なに、ウイルソン山天文台からまた無電が……」
 艇長の蜂谷学士《はちやがくし》は、手を伸ばして、進少年のさしだす紙片《しへん》をうけとった。その上には次のような電文がしたためられてあった。
「ワレ等ノ最後ノ勧告《かんこ
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