ね。しかし本当に戦争は起って?」
 丁度そのとき、号外の鈴が、けたたましく辻の彼方からひびいてきた。
「オヤ」

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防空隊の組織一覧表
                  ┌─防空飛行隊
             ┌直接機関┤─高射砲隊
      (軍部担当) │    │─高射機関銃隊
     ┌積極的防空機関┤    └─阻塞及び放流気球隊
     │       │    ┌─防空監視哨
     │       └補助機関┤─聴音隊
防空司令官┤            │─照空隊
     │            └─通信隊
     │
     │            ┌─消防隊
     │            │─燈火管制班
     └消極的防空機関 ────│─偽装遮蔽班
      (軍民協力または    │─避難所管理班
       民衆担当)      │─情報班
                  └─警備班
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「号外よ。どうしたのでしょう」
 思いついて、ラジオをひねってみたところ、いつもとは違ってアナウンサーの上ずった声が、容易ならぬ臨時ニュースを放送していた。
「帝国政府は、中華民国へ向って航空兵器をこの上輸出する国あらば、これを国防の精神によって、該兵器を没収することを内外に宣言いたしました。これによって対外関係はいよいよ悪化し、帝国政府は遂に宣戦布告を決意したものと見られています。……」
 孤立の日本の上には、もう今日明日に迫って爆弾の雨が降ろうとしているのだ。
「僕は洋服に着換えていよう」
 夫は妻君の方へ、緊張しきった面を向けたのだった。


   米露中からの空襲計画


 ――昭和×年、某国某所のナイト・クラブの一室にて――

「ねえジョン。お前さん、いよいよ出掛けるのかい」
 女は男の膝の上で突然に尋ねた。
「そうさ、メアリーよ。もう命令一つで、|吾が国《ユナイテッド・ステーツ》におさらばだよ」
「大丈夫? 日本の兵士達は強いというじゃないの」
「なに心配はいらない。いくら強くても、わが国の飛行機の優秀さにはかなわないよ。ボーイング機、カーチス機、ダグラス機、こんなに優秀な飛行機は、世界中探したってどこにもない。そして乗り手は、このジョン様だもの、日
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