だラルサン」
「あれはいいな、金の卵もいいが、卵よりあの方が高く売れるぜ」
「うん、俺も今、それを考えたところだ」
「どうだい、ちょうど二匹ずつに分けようじゃないか、恨《うら》みっこなしとゆこう」
「うん」
 二人がそんな相談をしている間に、モレロはあたりをかぎまわすように探しものをしていた。
「おい、フランソア、ラルサン、来てくれ、ちょっと手をかしてくれ」
 モレロは岩肌《いわはだ》をたたいた。
「なんです」
「ここをごらん、字が書いてある。二人のうち、読める者はいないか」
「さあ、どうも俺には、文字という奴がにが手でね」
「うん、英語なら少しはわかるんだが、こいつはどこの国の言葉だか知らんが俺にはわからねえんだ」
“宝、死と共にここに眠る”という謎のようなスペイン文字がモレロに読めたら、彼もちょっと考えたであろうが、残念ながら、彼には読めなかった。
「キッドの宝はここにかくされてあると書いてあるにちがいない。おい手をかしてくれ」
 しかし、岩はびくともしなかった。三人の力ではどうにもならない。
「うん、この岩さえどけりゃ、いいんだがなあ、ここまで来て、空《むな》しくもどるというのは、なんといってもしゃくにさわるな」
 モレロは腕をくんだまましゃがみ込んでしまった。
「親方、ピストルをお持ちでしょ」
「うん、持っている。が、ピストルの弾丸《たま》じゃこの岩はびくともしねえよ」
「ピストルで射つんじゃないんです。弾丸《たま》から火薬をぬいて……」
「うん、うん、わかった、わかった、手前はなかなか利口だ」
 モレロはにこにこした。ピストルの弾丸の火薬で、爆破しようというのだ。
 こういう事は彼等には手なれた仕事だ。
 モレロは弾《たま》をぬき出すと、その仕事にかかった。
 向うのすみから恐竜の子供たちが、首をそろえてこっちをみている。ミャア、ミャアと悲しそうな鳴き声をあげていた。
 突然、
「ダーン!」
 という音がした。音は岩の洞窟の中をはしりまわり、あちらこちらの岩肌にはねかえり、ぶつかりあいしてだんだんと大きくなっていった。
 だから海の外にこの音がながれ出た時には、地雷が爆発したような、どえらい音をたてたのである。
 海水をあびて、朝の空気を楽しんでいた恐竜どもがびっくりして首をあげた。
 中の一匹がわずか出てくる火薬の匂をかぎつけたのか、三人がしのんでいる洞
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