いる海賊の宝だったのではないのかな」
ラウダの話のとちゅうにケンが口を入れた。
「そうです。約八百八十年の昔、スペインの海賊船、ブラック・キッドがこの島にその財宝をかくしたという、しっかりした証拠があったのです。セキストン伯はそれを知っていました。そしてこの島に来たのです」
「それで、宝はさがせたのですか」
「さがせませんでした。二三枚の金貨をひろったようです。又波にくだけた宝箱の破片も得ました。ですから賊宝《ぞくほう》がこの島にあったということは証明されたのです。ですがそれを手に入れぬうちに引揚げざるを得なかったのでした」
「それは何が原因だったのです」
「恐竜です。恐竜がいる事で、探検団の連中はすっかり肚胆《どぎも》をぬかれてしまったのです」
「わかった。探検団は引きあげた。その船は恐竜におそわれて、乗組員はほとんど死んでしまった。残ったのはセキストン伯がたった一人だけだった。ということを伯が僕らに話していたっけ。けれど、もう一人生き残った者がいたのだ。彼はどんな方法かによって島にたどりついた。そしてこの孤島で救いを待ちながら一人生活していたんだ。その男はラウダ君、君だ」
「そうです。その通りです」
ダビットの説明をラウダは深く、大きくうなずいた。
そして、言葉を続けて、「いい落した処をおぎなうならば……」
「うん」
ケンがひざをのり出した。
「僕、ラウダはあれから五年間の間に恐竜の性質を研究した事、キッドの船をこの洞窟の中の湖に発見したこと。船の中には宝らしいものはなかったが、その宝は島の洞穴の一部にかくされていること。そしてそこへ行くには恐竜の巣をこえてゆかねばならぬこと。それを発見したのだ」
「さっき見た船、あれがキッドの船なの」
玉太郎は眼をかがやかせた。
「そうだ」
ラウダは湯を一杯のむと、
「ブラック・キッドは、自分の死期《しき》が近づいてきたのを知ると、かねてさがしておいたこの島にやってきた。この島の入江の洞穴の中に船を入れるだけの広さがあることを知っていた。しかも一度入れた船は岩をくずすことによって永久に出られぬ仕掛けになることも考えてあった。キッドは船をここに入れて、入口を岩でふさいだ」
「その時には、恐竜はいなかったの」
「さあ、そいつはわからん。恐らくいなかったのだろう、いても島の別の方面に住んでいたかも知れない」
「うん、それ
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