。
ポチは玉太郎の腰にとびついた。玉太郎が腰をかがめると、うれしくてたまらぬとばかり、鼻の頭をなめ、ほおをペロペロやり、ちぎれるばかりに尾をふった。
「やあ、ポチ、元気がいいなあ、御主人に会えてうれしそうだね」
ダビットはそういいながら、玉太郎とポチのようすをカメラにおさめた
撮影用のレンズは玉太郎から移動して、例の怪巨船《かいきょせん》にうつり、さらに岩道をこちらにやってきたラツールと怪人にむけられた。
「ラツールさん」
「おお玉ちゃん、よかったねえ」
ラツールは玉太郎の頭をなで、ついでケンやダビット、張の手をにぎった。
「よく生きていましたね」
とケン。
「ええ、このラウダ君、いやまだ、みなさんに紹介していないが、ラウダ君です」
ラツールは後に立っている怪人の方をふりむいた。
ラウダ君と紹介されたその人は、ボロボロの服をまとい、髭もぼうぼうとはやした人間ばなれのしたようすをしている。
「前の探検隊員の生き残り勇士ですよ」
「数年ぶりで英語が話せて、こんなうれしいことはありません」
ラウダはケンやダビットと握手した。
「僕はこのラウダ君に助けられたのです。皆さんが僕を崖の上において、ふたたび崖をおりていった後で、恐竜がやって来ました。それまで僕を看護していた方は、あまりの恐竜のおそろしさに、僕をかかえこむと夢中で逃げだされたのです」
「マルタンさんですね」
「そうだ。ピストルがなった時だ」
「僕らもおどろいて、洞穴《どうくつ》の中へ逃げこんでいた時だ」
「ふとったマルタンさんは僕を背負っている事が大へん苦痛だったんです。いくどかころびました。その都度、恐竜の長いおそろしい首がわれわれの方へのしかかって来るのです」
そうだろう。
一人は飢《う》えと疲れに、半分死んでいる人間だ。いかにマルタンが力があったとしても、それを背負って行くということは、大へん困難だったに違いない。ましてマルタンはふとっている。ただでさえかけ出すのに、心臓がドキドキする方だ。マルタンのこまりぬいたようすがよくわかる。
「最後にころんだ時は、生あたたかい恐竜の息が私の体をつつみました。マルタンは私とはなれて、草むらの中をころがって行きました。僕は気を失ったのです。そして気がついた時は、このラウダ君に助けられていたという寸法なのです」
「恐竜は弱いものいじめはしない。また動物は
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