村に向かって何か言おうとした。帆村はそれを手で制した。そして、「それは後にしてください」と目で知らせた。緑色の怪物たちがどう出るか、いまは最も大事な時であったから、むやみなことをいって、怪物の気持を悪くしてはいけないと思ったのだ。
そのうちに、怪物は相談が終ったと見え、前のようにならんだ。そして隊長らしい者が、帆村の方へ歩みよった。
「あなたがいま言ったこと、わかりました。わたくしたちは、あなたのことばに満足します。これからいろいろ聞きますから、返事をしてください」
彼は日本語でしゃべった。それは妙なひびきを持った日本語であった。しかし原住民の片言の日本語よりは、ずっと調子がいい。緑色の怪物は、いつの間に日本語を勉強したのだろうか。
「はい、承知しました」
と、帆村は素直にこたえた。ふだんとちがって、いやにおとなしいのであった。
「僕たちからも伺《うかが》うことがありますが、返事をしてくださるでしょうね」
「はい。返事をします」
「で、君のことを何とよべばいいでしょうか」
「わたくしですか。わたくしはココミミという名です」
「ココミミ。ああ、そうですか」
と、帆村はこの奇妙な名
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