艇が地上へ戻り、望月艇は奮戦を続けることにもきめられた。
午前五時。正確なその時間に、左倉少佐の号令一下、まず噴射艇彗星一号が、するどい音を発して、さっと空中にとびあがった。山頂の杉林の上を一とびに越えて、朝やけの空をぐんぐん上昇して行く。十秒後には、艇はもう噴射瓦斯を後へもうもうと、ふきだしていた。
無電報告が、彗星一号艇から来た。
「スベテ異状ナシ。総員士気|旺盛《オウセイ》ナリ」
かんたんな電文であるが、搭乗員も艇も、機関や機械類もすべて異状なしとあって、班長左倉少佐をはじめ地上員は大安心をした。
二十秒おいて、山岸中尉らの搭乗した彗星二号艇が出発した。これもうまくいって、みるみるうちに先発艇のうしろに追いついてしまった。北の鬼影山の頂の上空に、二つの艇は二組の尾をひきながら、すこしも狂わない調子で、ぐんぐん高度をあげていく。
異状なしとの無電報告が、二号艇からもやってきた。
左倉少佐は大満悦《だいまんえつ》に見うけられる。双眼鏡から目を放すと、室内へはいって来て、
「おい、通信長。テレビジョンをのぞかせろ」
と、テレビジョンの受影幕をのぞきこんだ。壁間には昼間もは
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