「しかし、折角《せっかく》こっちがつかまえておいたものを、むざむざ逃がすとは、なっていない」
「それよりも、僕はあの怪物がきっとこれから禍《わざわい》をなすと思うね。この鉱山に働いている者は気をつけなければならない」
「あんな七人組なんかよばないで、帆村さんにまかせておけばよかったんだ」
「そうだとも、帆村荘六のいうことの方が、はるかにしっかりしている。彼は『あの怪物は宇宙線を食って生きている奴だ』と、謎のような言葉をはいたが、宇宙線てなんだろうね。食えるものかしらん」
 誰もそれについて、はっきり答えられる者がなかった。
「宇宙線というと、光線の一種かね」
「そうじゃないだろう。まさか光線を食う奴はいないだろう」
「それではいよいよわけが分からない」そういっているとき、帆村荘六が、例のとおり青白い顔をして、部屋へはいってきた。彼は皆につかまってしまった。そして宇宙線が食えるかどうかについて、矢のような質問をうけたのであった。
「宇宙線というのは、X線や、ラジウムなどの出す放射線よりも、もっとつよい放射線のことだ」と、帆村は、皆にかこまれて説明を始めた。
「X線が人間の体をつきとおる
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