かへ行ってしまいましたよ」
「うん。しかし、どこからかこっちを見張っているにちがいないから、油断をしないように……」
「はい」
「お前、疲れたろう。しばらく寝ろよ」
「僕、ねむくありません」
「そうか。では兄さんは、二十分ばかりねむる。お前、起してくれ」
「はい、起します」
中尉はそこにごろんと横に寝た。
「これは寝心地がいいぞ。士官室の長椅子より上等だ。はははは」
中尉は豪快に笑った。そしてしばらくすると気持よさそうないびきをかきはじめた。
山岸少年は、兄ののんきさ加減にあきれてしまった。こんなおそろしいところへ来て、ねむってしまうなんて、なんということだろうかと。またこの気味のわるい白い雲のようなものの上で、よくもねむられるものだと感心した。もしもどうかして穴があいたら、二万七千メートルの高空から、体はまっさかさまに下へ落ちてゆくではないか。
少年は、このふしぎな「魔の空間」の中でとききれないたくさんの謎をかかえこんでしまって、妙な気持でいるのだった。いったいどうしてこんな高空に、地上の建物の一室とちがわない場所があるのであろうか。
あの怪人どもの頭の上についている、触角
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