歩きだした。一時間もすれば、ここへ戻ってくるという約束のもとに。
ふしぎな御馳走《ごちそう》
山岸中尉と山岸少年の二人は、帆村を送って後に残った。中尉は愛弟をうしろにかばって、新米のタルミミ隊をにらみつけていた。
タルミミ隊は、山岸中尉の前で活動をはじめた。どこからか円い卓子《テーブル》が持出された。椅子もはこんで来た。それから思いがけない御馳走が大きな器《うつわ》にいれられて、卓子の上におかれた。飲物のはいっている壜《びん》もきた。「水」だとか、「酒」だとか、「清涼飲料」とかの、日本字が書きつけてあった。
「さあ、どうぞ召上ってください」
と、タルミミ君らしい一人が、そういって挨拶をした。山岸中尉は返事に困った。
「御心配はいりません。これはあなた方にたべられないものでもなく、また毒がはいっているわけでもありません。安心して召上ってください」
タルミミ君は、ていねいにいった。
山岸中尉は豪胆な人間だったから、ここで弱味を見せてはならぬと思い、蜜柑《みかん》を一箇手にとった。それとなく注意してみるが、内地の蜜柑と変りのない外観をしている。そこで皮をむいた。ぷうんと蜜
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