、普通の人が考えていないようなことを考えていることなどに、だんだん尊敬の念を抱くようになった。
 山岸中尉は、帆村の訪問を受け、例の白根村事件について話してくださいと頼まれた。もちろん中尉は承諾《しょうだく》して、竜造寺兵曹長と、かわるがわる例の歩行困難事件について説明した。それから始って、中尉は帆村と、宇宙線問題や、成層圏飛行や、それから宇宙に棲《す》んでいる地球以外の生物の話などについて、三時間あまりも熱心に語りあった。そして中尉は、帆村荘六の宇宙戦争観に、非常な共鳴をおぼえたのであった。
「たしかに、そうだ」
 と、山岸中尉は軍服の膝を、はたとうっていった。
「十数億光年の広さをもったこの宇宙には、何百万、何千万とも知れない無数の星があって、それがいずれもわが太陽と同じように、光と熱とを出しているのだ。したがってそのまわりには、わが地球同様の遊星が、これまた何百万、何千万と無数にあって、自分で太陽のまわりを廻《まわ》っているのだ。そういうおびただしい遊星の中で、地球のわれわれが最も科学知識にすぐれているとは、いくらうぬぼれ者だって、そうは思わないだろう。われわれが、そういう他の遊星生物を知らないのは、お互いの距離がまだ遠すぎて、まだ飛行機で交通も出来ず、電波通信も届かず、たとえ届いても、その意味がわからない。だからまだ知らないのだ。やがて交通や通信の距離がひろがると、きっとそういう他の遊星生物とぶつからなければならない。そのとき、すぐ友達となって手が握れるか、それともすぐ戦争になるか、いったいどっちだろう。それは今はっきりわからない。しかし帆村君のいうように、われわれとしては、宇宙戦争の用意を、今から十分にしておかねばならないと思う。その時になって騒いではもう間に合わないのだ。ことに、相手が、われわれよりもずっと力も強いし、科学知識にもすぐれていた場合には、こっちに用意ができていないと、たちまち彼等の奴隷《どれい》になってしまうか、それとも皆殺しになってしまわなければならない。宇宙戦争だ。そうだ、帆村君のいうとおり、宇宙戦争は必ず起るぞ。これは油断できん」
 山岸中尉は、すっかり帆村荘六の説に共鳴したのであった。
「まったくこれは大変ですなあ」
 と、傍《そば》で茶をのみながら、二人の話に耳を傾けていた竜造寺兵曹長が、感きわまって、嘆声をあげた。
「分隊士、そ
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