成功して、ミミ族の正体をつきとめねばならない。
その翌日から、いよいよ帆村所長の指揮で、ミミ族狩りがはじまった。
電子ストロボ鏡で、天空をのぞいていると、ちょうど天空から、そろそろと降下してくる回転楕円体の「魔の空間」を発見した。それは約十|粁《キロ》ばかり東へいった、山麓《さんろく》附近を目がけて下りてくるようだ。
「出動――」
帆村は号令をかけた。所員と警備隊員とは、軍用自動車にとび乗って、街道を全速力で東へ走らせた。
あと一粁ばかりのところで、車はとめられた。そして陣地がつくられ、車の上へ積んできた怪力線砲と、音響砲は下され、対空戦闘の用意はととのえられた。
「戦闘開始」
と、帆村は警備隊長の竜造寺兵曹長へ命令を発した。竜造寺兵曹長は、こん度は特に志願して帆村の下につき、警備隊を指揮することとなったのだ。「魔の空間」から救いだされて以来、兵曹長は深く感激し、帆村に恩をかえしたいと思いつづけていたのだ。
「怪力線砲、撃ち方はじめ」
兵曹長は、はじめ打ちあわせた順序により、まず怪力線砲から射撃をはじめた。目に見えないが、強い電磁波は、一直線にのびていって、天空をわが物顔に下りてくる「魔の空間」を突きさした。
「所長。怪力線は『魔の空間』に命中」
と、兵曹長は叫ぶ。
帆村はもちろん、電子ストロボ鏡でそれを見まもっていた。
「怪力線、射撃をつづけよ」
と、帆村は命令して、「魔の空間」にどんな変化がおこるかと、目を皿のようにして見つめていた。が、三十秒、一分、一分三十秒とたっても、「魔の空間」は、なんの変化も示さず、あいかわらずゆっくりと下降をつづけているではないか。
(だめだ。怪力線砲は効果なしだ)
帆村はそう思った。
「隊長、音響砲で砲撃を……」
そういって、帆村は竜造寺兵曹長に命令した。
「音響砲、撃ち方はじめ」
砲撃はすぐはじまったが、光も見えなければ、音もしない。音響はだすが、超音波のことだから、人間の耳には音と感じないのだ。だが、音響砲は頼もしくも、手ごたえがあった。
「あっ、『魔の空間』が落下の速度を早めたぞ。機関が故障になったのだ。ああ、墜《お》ちる墜ちる。あそこへ急げ」
帆村は、狙った「魔の空間」が、音響砲の砲撃のため、故障になって墜落するのを見定めると、全員を急がせて、その落下の場所へ移動を命じた。あと僅か一|粁《キロ》ばか
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