た。そのほかに、頭脳明晰な科学者を十数名集めて、このミミ族研究所は、いそがしく発足したのであった。
 班長左倉少佐は、帆村にぜひ一日も早く、ミミ族の正体と弱点とを探しだしてくれるようにと頼んだ。左倉少佐は、山岸中尉から「魔の空間」脱出当時のすべての話を聞いて、今は帆村をぜったい信用しているのだった。そして帆村の研究のため、あらゆる便宜をはかる決心だった。
 帆村は事実たいへん便宜をえた。海軍航空隊を出動させることなんか、全くすぐやってくれるし、宇宙線を通さない丈夫な箱――それはミミ族の檻《おり》に使うつもりだった――を作るのに、なかなか手まどると聞けば、隊の資材や労力を貸してくれるという風で、帆村のやりたいことや、欲しいものは、思いどおりにかなった。
 そのために、帆村はいよいよミミ族と正面からぶつかる用意を、わずかあれから三箇月後に完了したのだった。帆村はそのことを報告するために、一日左倉少佐を訪ねたのであった。左倉少佐はたいへん喜んで、すぐ別室から山岸中尉を呼びよせ、二人で帆村の報告を聞くことにした。
「おかげさまで用意はととのいましたから、いよいよ明日から、ミミ族狩りをはじめます。また御支援を願わねばなりません」
 帆村はミミ族狩りの決行を報告した。
「そうか。いよいよやるか。しかし相手は、人間ばなれのした恐しい奴だから、じゅうぶん気をつけるように……」
 班長は注意を与えた。
「はい。じゅうぶん注意します」
「で、どういう風に、ミミ族狩りをするのか」
「は。ミミ族は、こちらに電子ストロボ鏡のあることを知らないらしく、好きなときに、空から地上へ「魔の空間」を近づけてきます。私はそのうちに、どこか内地の手ごろなところへ下りてくるやつを、攻撃してみるつもりです」
「そうか。で、攻撃兵器は……」
「いま、二種だけ用意してあります。一つは怪力線砲です。これはごぞんじのとおり、短い電磁波を使ったもの。もう一つは音響砲です」
「音響砲、それは初耳だなあ」
 左倉少佐は、山岸中尉と顔を見あわせる。
「班長、その音響砲は、帆村君の最近の発明兵器です。なかなか有効です」
 山岸中尉がにこにこして言った。
「私の発明したものには違いありませんが、大したものではありません。要するに特別の音響が、ホースから水がとびだすように、一本になって相手にかかるのです。この音響は、多くは人類の耳
前へ 次へ
全81ページ中72ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング