みたいなものはなんであろうか。
怪人どもの正体は、あの中にあるのだと帆村がいったが、それはほんとうかしらん。ほんとうなら、いったいどんな形をしているのであろうか、ミミ族という生物は……。
地球人類と同じく銀河系の生物だから、親類だと思ってくれと、ココミミ君はいっていた。銀河系の生物とはなんのことだろう。
こうして考えていけば、謎はつきない。夢のようにふしぎである。しかし夢ではない。頬をつねればちゃんと痛い。
早くも二十分がたったので、山岸少年は兄を起した。中尉は起き上ると、海軍体操を二つ三つやって、元気に笑った。
「さあ、これでいい。くるなら来い、どこからでも来いだ」
「兄さんは、よくねむれますね」
「いや、さっきはねむくて困ったよ。……まだ帆村君はもどって来ないか」
「ええ、もう一時間を五分ばかりすぎていますがね」
「話が長くなったのかな。それとも……」
「それとも」
「いや、心配しないでいいよ」
帆村はなかなか姿を見せなかった。なにかまちがいがあったのではないかと、山岸中尉は思った。だからといって、この白昼探しにゆくわけにもいかない。夜のくるのを待つほかないのだ。ところが、夜はいっこうやってこなかった。
そのはずだ。ここは地球の上ではないのだ。「魔の空間」である。あたり前なら、二万七千メートルはなに一つ見えぬ暗黒界でなければならぬ。それにもかかわらず、こうして白昼のように物の形がみえているのは、ここが「魔の空間」なればこそだ。謎はますます深くなってゆく。
帆村の偵察《ていさつ》
帆村は十時間めに戻ってきた。
「どうした。心配していたぞ」
山岸中尉は喜んで、思わず帆村の手をとった。帆村の手は氷のように冷えきっていた。帆村の顔色は悪く、土色をしていた。そしてぶるぶると悪寒《おかん》にふるえていた。
「どうした、帆村班員。報告しない前に、なんというざまか」
山岸中尉は、声をはげまして叱りつけた。それは帆村の気を引立たせるためだった。
「はいっ」帆村は大きく身ぶるいして、姿勢を正した。だがつぎの瞬間、崩れるようにへたへたと坐りこんでしまった。
「電信員。艇内から酒のはいった魔法壜をもってこい」
「はい。持ってきます」
山岸少年は大急ぎで艇によじのぼり、兄にいわれたものを探しあてて下りてきた。
一ぱいの香り高い日本酒が、帆村を元気づけた。土
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