も知れない。
 彼らはココミミ君の前に整列した。新しく来た彼らは、体の色がすこし淡《うす》かった。そしてどこかおとなしいところがあった。ココミミ君は帆村にいった。
「これはタルミミ隊の者です。これから、このタルミミ隊が皆さんのお世話をします。私の隊員は、戦闘をするのが専門ですから、自然皆さんに失礼があったと思います。しかし私どもとしては、はじめて迎える地球人類にたいして、そうとう警戒の必要を感じていたわけですから、どうぞあしからず。で、このタルミミ隊は、じゅうぶん皆さんの気にいるようにお世話をすると思います。なんでもいいつけてください。皆さんのための食事の用意もありますよ。しかし、ここから脱走することのお手伝いだけは、させないでください。でないと、ミミ族を憤激させることになります。そうなれば、もう取りかえしがつきませんからね」
 ココミミ君は、帆村たちにこのようにいって、できるだけの好意を示した。そして帆村にむかい、
「では、もっとゆっくりあなたと話をしたいと思います。いっしょに来てくれますか」
 ときいた。帆村は山岸中尉の許しをえて、ココミミ君の申し出に同意した。そこで二人はならんで歩きだした。一時間もすれば、ここへ戻ってくるという約束のもとに。

   ふしぎな御馳走《ごちそう》

 山岸中尉と山岸少年の二人は、帆村を送って後に残った。中尉は愛弟をうしろにかばって、新米のタルミミ隊をにらみつけていた。
 タルミミ隊は、山岸中尉の前で活動をはじめた。どこからか円い卓子《テーブル》が持出された。椅子もはこんで来た。それから思いがけない御馳走が大きな器《うつわ》にいれられて、卓子の上におかれた。飲物のはいっている壜《びん》もきた。「水」だとか、「酒」だとか、「清涼飲料」とかの、日本字が書きつけてあった。
「さあ、どうぞ召上ってください」
 と、タルミミ君らしい一人が、そういって挨拶をした。山岸中尉は返事に困った。
「御心配はいりません。これはあなた方にたべられないものでもなく、また毒がはいっているわけでもありません。安心して召上ってください」
 タルミミ君は、ていねいにいった。
 山岸中尉は豪胆な人間だったから、ここで弱味を見せてはならぬと思い、蜜柑《みかん》を一箇手にとった。それとなく注意してみるが、内地の蜜柑と変りのない外観をしている。そこで皮をむいた。ぷうんと蜜
前へ 次へ
全81ページ中52ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング