《きどう》をとっていたから。
 ジャンガラ星が、地球に対しあと一万メートルの距離に達したときには、地球人のおどろきは一段とたかまり、さわぎであった。ジャンガラ星は、慎重にかまえて、距離千メートル以後は一日に百メートルずつ高度を下げて行き、百メートルの最少距離になると、それ以上近づかない予定であった。また、ジャンガラ星は、だいたい南アメリカのアマゾン川に面した空中に停止する予定であった。ところがこの予定は、はずれてしまった。
 ジャンガラ星は三日も早く地球の方へ吸いよせられ、ついには百メートルの最少距離を残すどころか、そのまま南太平洋の海面に接触してしまった。そして接触するやたちまちものすごい爆発を起して、ジャンガラ星は煙とも灰ともつかぬ微粒子《びりゅうし》となって、空をおおってしまった。それは地球全体の空をおおいつくし、太陽の光は色をうしなってしまったほどであった。これは星と地球の海水との間のすごい摩擦力《まさつりょく》でそうなったものであろう。
 ジャンガラ星は、こうして姿を変えた。地球もめいわくな空中塵《くうちゅうじん》になやまされなければならなかった。ある学者は、この空中塵が地球上に氷河時代を出現せしめるであろうし、そのために人類はみな死滅するであろうと予告したが、じっさいはそれほどのことはなかった。しかし全世界は地上に達する太陽熱が減ったために、それから十年間というものは凶作《きょうさく》がつづいた。おそろしい影響であった。
 カロチ教授たちは、みんな死滅《しめつ》してしまって跡形《あとかた》もない。川上、山ノ井の二少年だけはさいわいにも一命を拾った。それは二少年は、ジャンガラ星が地球に接触する三時間前に、落下傘《らっかさん》を作りあげて、ジャンガラ星から脱出し、運よくオーストラリアに着陸することができたためであった。
 二少年は、その後元気になってから、めずらしいジャンガラ星の話をして、みんなに喜ばれた。二少年は、そのうちに新しい宇宙艇を手に入れて、またもや宇宙探険に出かけるといっている。そしてまだわれわれの知らない宇宙にすんでいる高等生物に面会し、こんどこそぶじにこの地球へ案内するんだと、たいへん意気ごんでいる。



底本:「海野十三全集 第11巻 四次元漂流」三一書房
   1988(昭和63)年12月15日第1版第1刷発行
初出:「少年クラブ」
   1947(昭和22)年4月〜10月
※「探険」と「探検」の混在は、底本通りにしました。
※「探険家はだれかというと、」と「千ちゃんとよばれているが、」の「、」は、底本では、「,」となっています。
入力:tatsuki
校正:浅原庸子
2003年9月5日作成
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