とうだよ。ほっぺたをつねってみな、いたいから」
「待て待て」山ノ井は自分のほおをぎゅっとひねった。
「あいたたた。これはほんとうだぞ。よう、ポコちゃん。よくきみは生きていたね」
「生きているさ。ぼくが死ぬなんてことがあるものか」
「いや、ポコちゃんは死んだんだ。いや、殺されたんだ。殺されたところを、たしかにぼくは見たんだ。それは……」
 と、山ノ井がいいかけたとき、ジャンガラ星人たちが、びっくりするほどの近くできみょうな声を大きくはりあげた。
 山ノ井は、その方へけわしい目をむけ、星人たちをぐっとにらみつけた。
「来るなら来い。近よれば、この草や木同様、へし折ってくれるぞ」
 山ノ井千ちゃんは、鉄の棒をぶんぶんふりまわして、怒りのかたまりと化《か》している。
「千ちゃん。きみはなぜあの連中とけんかを始めたんだい。そのわけをきかせてくれない」
 川上はうしろから声をかけた。
「そのわけかい。そのわけは……」と山ノ井はちょっとことばにつまって、「……ポコちゃんが、こうしてぴんぴんして、ぼくのそばへ帰って来た今となっては、どうもへんなものだね」
「なにがへんなの」
「なにがへんだといって、つまりぼくはポコちゃんを、かれらの手からとりもどそうとして、ひとりでこうして奮闘《ふんとう》していたんだ。しかし、きみはぶじに帰って来たんだから、もうべつにけんかをしなくてもいいわけだけれど、なにしろさっきから両方でじゃんじゃんやったことだから、すぐやめるわけにもいかない」
「つまらないよ、そんなこと。すぐよした方がいいよ。それに、けんかなんて、いいことではないからね」
「そりゃわかっている。しかしかれらは、こわれたカモシカ号へずかずかはいって来ると、大けがをしているきみのからだを手荒くなぐりつけるやら、あのへんな手をきみの口の中へおしこむやら、らんぼうをしやがった。そしてぼくのとめるのをきかずに、大ぜいできみをさらっていってしまったんだ。ぼくはくやしいやら、腹が立つやらでね、すぐ追っかけようと思ったんだが、カモシカ号|墜落《ついらく》のときにひどく腰をぶっつけて痛くて立ちあがれないんだ。それでぐずぐずしているうちに、きみをもっていかれてしまった。ぼくがあばれだしたのは、それから十五分もたった後のことで、きみはどこへさらわれていったのか、さっぱりわからない。くやしかったよ。そのときは……
前へ 次へ
全46ページ中40ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング