中に、二つならんだ操縦席がある。右の席にはポコちゃんが、左の席には千ちゃんが腰をふかくうずめている。
 操縦席と計器盤と自動式操縦ボタンとが、鋼鉄製《こうてつせい》の大きなかごのようなものの中にとりつけられている。そのかごは、外側に二本の軸がとびだし、それがかごをとりまく大きいじょうぶな輪《わ》の軸受けあなへはいっている。その輪には、おなじような二本の軸がとびだし、かごの軸と九十度ちがった方角へでていて、それが外側にあるもう一つの大きなじょうぶな輪の軸受けあなへはいっている。そしていちばん外側の輪は、しっかりと艇のかべにとりつけられている。
 つまり、昔からあるらしん[#「らしん」に傍点]儀《ぎ》のとりつけかたとおなじである。そのとりつけかたをすると、船がどんなにかたむいても、らしん[#「らしん」に傍点]儀の表だけはちゃんと水平にたもたれるのだ。――カモシカ号の操縦者とともに、いつも重力の方向にじっとしていて、横にかたむいたり、さかさになったりしないようにたくみに設計されているのであった。
 だから宇宙艇カモシカ号がまっすぐに上昇しようと、水平方向にとぼうと、あるいはまた宙がえりをしようと、操縦席はいつも直立不動で、操縦席にいる人間は家の中でいすに腰をかけてじっとしているのと同じことであって、たいへんらくである。
 そのかわり宇宙艇の頭は、すきとおったあつい有機ガラスと、じょうぶな鋼鉄のわくとをくみあわせて、半球形《はんきゅうけい》になっていて、操縦席がどっちへむこうとも、いつでも艇の外が見られるようになっている。
 艇は、垂直《すいちょく》に上昇をつづけている。
 太陽の光りはあかるく円屋根《まるやね》の左の窓からさしこんでいる。
 高度は、今しがた七千メートルを高度計のめもり[#「めもり」に傍点]がしめした。
 下界《げかい》は、はばのひろい濃いみどり色のもうせんをしいたように見え、そのもうせんの両側にガラスのような色を見せているのは海にちがいない。まるで白い綿をちぎったような小さな雲のきれが、艇と下界のあいだに浮いて、じっと、うごかないように見える。
「千ちゃん、たいくつだね。下界のラジオでもかけようか」
「うん。どこか軽快な音楽をやっている局をつかまえてくれよ」
「ああ、さんせいだね」
 ポコちゃんが短波ラジオのダイヤルをぐるぐるまわしていると、アメリカのラ
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