ほとんど同時に、難破した新コロンブス号の一つの窓に何か字をしたためてある一枚の紙がはりついているのを発見した。そしてそのうしろに、りっぱな艇長の服をきているがい[#「がい」に傍点]骨が立っていて、
「お前たち、早くこれを読めよ」といっているようであった。どうやらそれはロゴス氏のがい[#「がい」に傍点]骨らしい。
がい[#「がい」に傍点]骨がまもっているその一枚の紙にはたしてどんなことが書いてあったろうか。
がいこつ[#「がいこつ」に傍点]の警告
がいこつ[#「がいこつ」に傍点]艇長が、こっちを向いて、紙に書いたものを「ぜひ、これを読め」というように、こっちへ見せているのだ。
山ノ井も川上も艇長服を着たがいこつ[#「がいこつ」に傍点]には、びっくりして顔色をかえたが、わけのありそうながいこつ[#「がいこつ」に傍点]艇長のようすに、こわいのをがまんして、紙きれに書いてある文句をひろって読んだ。
それは、つぎのような文章であった。
[#ここから1字下げ]
――ここは宇宙の墓場だ。けっして乗物のエンジンをとめるな。エンジンが動かなくなるとわが新コロンブス号と同じ運命になろう。それからもう一つ、時々ここをつきぬける、すい星があるから注意せよ。
[#地付き]新コロンブス号艇長ロゴス――
[#ここで字下げ終わり]
山ノ井と川上とは顔を見あわせた。
「やっぱり探険家のロゴス先生だったね」
「そうだ。ロゴス先生は、がいこつ[#「がいこつ」に傍点]になってもあとから来る者のために、とおとい警告をしていてくれる。えらい人だね」
そういっているうちに、動いているこっちのカモシカ号は、どんどん新コロンブス号から、はなれていった。二人は、それをじっと見送りながら、宇宙探険の英雄の霊《れい》のために、いのった。
しばらくは二人ともだまっていた。がいこつ[#「がいこつ」に傍点]艇長にめぐりあったことが、ひどく胸をいためたからだった。
そのうちに川上が声をだした。
「ねえ、千ちゃん、いったいこの重力平衡圏というところは、どんなところだろうね。もちろん地球の方へ引く重力と、月の方へひっぱる重力とが、ちょうどつりあっていて、重力がないのと同じことだとはわかっているが……」
ポコちゃんの川上は、小さい目をくりくり動かして、そういった。
「それだけわかっていれば、それでいいじ
前へ
次へ
全46ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング