てきますからね」
 と、帆村は当直の人びとにいった。
 あいかわらずギンネコ号は、遠くへはなれつつあった。
「帆村のおじさん。ギンネコ号は、うまいことをいって、にげてしまうんじゃない」
 三根夫は心配でしかたがなかった。
「さあ、何ともはっきりしたことはいえないが、さっきあのように返事をよこしたんだから、まさかほんとうににげはしまい」
 そう答えた帆村も、レーダー手が新しい距離を測定してそれを曲線図にかいたのを見るたびに心配に胸がいたんだ。
 それは十二時近くであった。
「あッ、たいへんだ」
 と、レーダー手が、おどろきの叫び声をあげた。
 帆村はすぐ椅子からとびあがって、レーダー手のところへいった。
「どうしたんですか」
 するとレーダー手は、ブラウン管の膜面におどるエコーの映像を指してダイヤルをまわしながら、
「これごらんなさい、ギンネコ号がおびただしい電波妨害用の金属箔《きんぞくはく》をまきちらしたようです。このへんいったい、そうとうひろく、エコーがもどってきます」
「なるほど。とうとうみょうなことをはじめたな」
 ギンネコ号がまきちらしたらしい電波妨害用の金属箔というのは、よく
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