っておられることと思うが。……
(臨時放送は、まもなくはじまる。そうだ、すぐおじさんに知らせておかなくては。……あとで「なぜそんな重大なことをおしえなかったのか」などといって目をむくおじさんだから、知らせておいたほうがいい)
 三根夫は、事務室をとびだすと、廊下を全速力で走って、いまものべたように、伯父の書斎までかけつけると、扉をどんどんたたいたのである。
 なかから、大人の声が聞こえた。
「臨時ニュースの放送か。よしわかった。……鍵はかかっていないよ。こっちへはいってミネ君も聞くがいい」
 伯父は三根夫のことを、いつもミネ君と呼んでいる。探偵を仕事としている伯父のことだから、なかなか気むずかしいこともあるが、ほんとはやさしい伯父なのである。
 三根夫は扉をあけて、書斎にはいった。
 伯父の帆村荘六《ほむらそうろく》は、寝衣《ねまき》のうえにガウンをひっかけたままで、暗号解読器をしきりにまわして目を光らせていた。このようすから察すると、伯父は夜中にとび起きて、なにかの暗号をときにかかったまま、朝をむかえたものらしい。
 伯父の頭髪はくしゃくしゃで、長い毛がひたいにぶらさがって目をふさぎ
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