規の御奉公したいと、急にそういう気にかわったのである。すると、中国船平靖号の一員として、そのままいることが厭《いや》になった。そこへ虎船長には、こっぴどくおこられる。どうにでもしろと、こっちも中《ちゅう》ッ腹《ぱら》になっているところへ、ボートがノーマ号に出かけることになったが、こいつがまた虎船長から、はっきり停《と》められてしまったので、どうせ怒られ序《ついで》だとおもって、脱船をしてしまったのである。
そういうことはよくない事だった。船長の命令をまもらないのは、わるいことだと、竹見は百も二百も承知していた。しかしながら、彼はわかかった。海へ出て来たのは、生命《いのち》をまとに、おもいきり冒険をするためだった。若い者は、なんでもはやいところむさぼり食《く》いたい。冒険味だってそうだ。平靖号乗組員として参加したのもそうなら、水兵さんになりたいとおもったのもそうである。三転して、ノーマ号へいって、外人のかおを見ないではいられない衝動にかられたのも、やっぱりそれだった。若い者は、気もみじかい。ことに竹見にいたっては、非常に気がみじかい。
気がみじかいことは、一めんから見れば、たいへんよ
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