た自記機械があった。自記機械というのは、人が見ていなくても観測した結果が、長い巻紙の上に、インキでもって、曲線になって記録せられる機械である。例えば、室内の温度が一日のうちに、どう変ったかというようなことを知りたい時、人が寒暖計のそばにつききりで、一々水銀の高さを読んで記さなくとも、この自記機械にかけておくと、巻紙が廻るにつれ、ペンが長い曲線をかいて、室内温度がどう変ったか記してくれる。
 蟻田博士は、この自記機械をあけ、中から巻紙をひっぱって、それを見るのに夢中になっている。
「博士。よく見廻りましたが、もうお屋敷のうちには、誰もいませんですから御安心なさいませ」
 と、新田先生は、博士の後から、声をかけた。
 ところが、蟻田博士は、それには、返事をしない。
 そうして、なおも夢中になって、その自記機械から、巻紙|様《よう》のものを長くひっぱり出して見ている。その目は異様な光をおびていた。
「博士。それは、何を自記する機械ですか」
 新田先生は、博士の後に近づいた。
 博士は、新田先生に声をかけられ、びっくりしたようであった。
「誰かっ?」
 と、けわしい目で振返って見て、そこに新田
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