供用のかぶとはないのですか。これは大人用でしょう」
 と、千二は困った顔だ。
「いや、子供用というのはない。用意してなかったのだ。しかし、見かけは重いが、火星の上ではそんなに重くはないよ」
 大空艇は、流星のように火星の表面へ落ちていった。
「あと三時間で着陸だ」
 と、博士は言った。
 火星は、いつの間にかどんどん大きくなり、そのころには、もう、たらいぐらいの大きさになっていた。実に、どんどん早く大きくなる。
 大空艇は、かなりものすごい落下速度を出しているが、速度の変りかたがうまくいっているので、からだには、あまりこたえない。
 千二は、火星に近づいたので、何だか、急に嬉しくなった。彼は、火星の見える窓にのびあがって、しきりに眺めている。
 だが、変なことに、火星のおもては、地球のようにはっきりしない。何となく、どんよりと曇っている感じだ。
 ちょうど、苔《こけ》のついた古い金魚ばちの中へ、地球儀をほうりこんで、それを外から見ているような感じだ。
 千二は、そのことを新田先生に話した。すると先生は、
「それはね、火星の外側は、塵《ちり》のようなものが、たいへんたくさん集っていると、
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