って来た宇宙艇には、このような不思議な働きをするものが、いくつもあった。
「おう、千二。きょうはきげんはどうかね」
 丸木はそう言って、千二のそばへ寄って来た。
「はい、上きげんであります」
 千二は、あざやかな火星語でそう答えた。
 丸木は、手足をばたばたと動かした。それは、うれしいという気持をあらわしているのだった。
 火星人は植物だから情心《なさけごころ》などはなかった。しかし丸木は、火星人の中でもすぐれた人物だったので、このごろ情心というものを自分の心にも植えてみようと思った。丸木はそのために、千二を使っているのであった。
 千二少年は、あれからずっと丸木のため、きびしく監禁されていたが、少年は一度は大きな悲しみに沈み、その後あきらめたのか、ほがらかになった。とにかく、このいつわりのない少年の心が、怪人丸木を、たいへん動かしたものらしい。
(自分も、この少年のように、情心を持ちたいものだ!)
 そう思った丸木は、それから後、いつも千二少年をそばにおいて、少年の悲しみや、笑いや、それからいきどおりや、かわいがることなどを手本にして、自分もそのような感情を湧かそうと、つとめたのだっ
前へ 次へ
全636ページ中420ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング