トの珍しい姿に、すっかり気を奪われていた。そのあたりに、火星人が、うようよいることを、忘れていたのである。それは、ほんのちょっとの間のことだったが……。
先生が、はっと我にかえった時は、もう遅かった。何者かが、先生の両腕をうしろから強い力で、ぎゅっとおさえつけた。
「あっ、しまった」
と、先生がそれをふりほどこうとする間もなく、今度は、先生の両眼が見えなくなってしまった。それは、うしろから、いやにぬらぬらするゴム布のようなもので、目かくしをされてしまったのである。
いくら、じたばたやって見ても、うしろから、先生の腕をおさえている力は、たいへん強く、それを無理にふりほどこうとすれば、先生の腕の方が、今にもぽきんと折れそうになった。
(騒ぐだけ損だ!)
先生は、勇気をなくしたわけではなかったけれど、今、じたばた騒いでも、こっちの体が痛くなるばかりなので、手向かうことをやめた。あとで、相手にすきが出来た時に、力一ぱい腕をふるうことにした方がよいと、賢い新田先生は早くも見てとった。
「な、何をするんだ、君がたは……」
先生は、おちつきの心をとりかえしながら、相手を叱りつけた。
先生
前へ
次へ
全636ページ中272ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング