う」
課長は、よく、こんな風に自席を立ち、後に残った机の前の客を、知れないように写真にとらせることがよくあった。つまり、その時たずねて来た人の顔を、後のために、ちゃんと残しておく必要があるような時には、よくやる手であった。警官は、またその写真かと思ったのである。
課長は、衝立のかげから、自席の方を注意している。
その時、警官が課長の耳の近くに口をよせ、早口で言った。
「あっ、課長。あの老人が変なことをやっていますよ。いいんですか」
「ああ、いいのだ」
「あっ、課長の机の上にある箱の中から、何か長いものをひっぱり出しましたよ。大丈夫ですか」
「うん、いいのだ」
いいのだ、いいのだと言っているうちに、蟻田博士のからだは、課長の机を離れた。そうして、戸口の方へ、早足で、つつうっと歩いて行く。どうやら、博士は逃げるつもりらしい。
「いいんですか、課長。あの老人は太い奴ですよ。課長の机の上から、何か盗んで行きますが、いいのですか」
蟻田博士は、うまうまと、青い色のむちのようなものを、大江山課長の机上から盗んでしまった。それは、課長が、千葉の天狗岩の附近から拾って来た貴重な証拠物であっ
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